少年犯罪は減っている

 「少年犯罪は減っている」というと「意外だ」という人が多い。「最近の若者は道徳心に欠け、犯罪も増加している。教育が悪い」というような議論をよく聞くが、統計では、少年犯罪は減っている。とりわけ、貧しかった戦後から比べると激減している。
 日本は、国際比較では、少年による凶悪犯罪が非常に少ない国だという。教育が悪いと言うがために、少年犯罪が凶悪化し、増加しているというイメージが作られているのだろうか。
 また、50代以上の男性による殺人が異常に多い国だという。年間3万人もの自殺者を出し、中高年の男性の自殺が増えていることとも関連するのかも・・・。
詳しくは、少年犯罪データベース http://kangaeru.s59.xrea.com/
 
 一方、少年院入院中の男子の5割、女子の6割が児童虐待の被害者であるという。児童虐待の増加は、犯罪を誘発するともいえる。
<参考>
反対討論:「(仮称)青少年健全育成基本法」の制定を求める意見書提出について 
                              2004年第一回定例会


 私は新星クラブとして「(仮称)青少年健全育成基本法」の制定を求める意見書提出に反対の討論を行います。
 最近の青少年のかかえる問題が大人の作り出した社会状況の反映であることを思うと、大人の一人として青少年の健全な育成が保障されていない責任を痛切に感じます。しかし、今回の「(仮称)青少年健全育成基本法」の制定は、問題の本質を理解した上での法案だとは到底思えません。
 なぜなら、意見書にある、性描写や暴力シーンを売り物とした雑誌やビデオやインターネットや携帯電話などを規制しても問題解決につながらないからです。逆に、憲法で保障された表現の自由を奪うものだからです。成熟した民主主義を目指すのならば、自主規制を求めるべきであります。
意見書案には青少年による凶悪犯罪が指摘されていますが、私達は、青少年の殺人、暴行、傷害、強姦などの凶悪犯罪が激減していることをまず、認識しなければなしません。少年の凶悪犯検挙人数は、今から45年前、1959年の7684人をピークに減少してきましたが、1991年から増加傾向へ転じ、2年前に2000人を超えたのが事実です。殺人犯に限れば、今の50から60歳代の大人たちが10代であったころの5分の1ということです。いまどきの青少年は昔に比べて、格段に凶悪犯罪をおこさないのです。
また、意見書案には薬物の乱用が指摘されています。麻薬取締りの数は20年前をピークに減少しています。この事実の共有認識が必要だと思います。
確かに、最近、青少年による犯罪報道が注目されているのも事実です。天才肌の青少年による特異な犯罪について語るのは非常に難しいものがあります。しかし、たいていの青少年の犯罪の原因は、親子関係や地域での人間関係の薄さにあるといえるのではないでしょうか。両親からの、あるいは片親からの、あるいは親以外の保護者からの愛につつまれ、きちんとしつけられた青少年が罪を犯すことなどありえないからです。
そしてまた、インターネットや携帯電話に関連して犯罪の被害者にまきこまれる青少年も、家庭や学校や地域で疎外感を感じていることがその行動の原因なのです。
「児童が、その人格の完全なかつ調和のとれた発達のため、家庭環境の下で幸福、愛情及び理解のある雰囲気の中で成長すべきであることを認め、児童が、社会において個人として生活するため十分な準備が整えられるべきである」としたいわゆる、国連のこどもの権利条約に違反している大人によって、苦しめられた青少年が犯罪に走り、問題行動を起こすのです。
日本はこの、こどもの権利条約を1994年に批准したものの、国内法の整備を行っていません。こどもの権利条約の基本理念にもとづき、大人が、青少年を健全に育てる義務を自覚することこそが必要です。青少年には、こどもの権利条約の内容をきちんと教育し、もし、健全育成が保障されない場合は、近くの信頼できる大人に相談しなさいと教えることが必要なのです。そして、私たち大人には、SOSを発する青少年の受け皿を作ることこそ求められていると思います。
以上、実効性が認められないうえに、憲法に違反する、「(仮称)青少年健全育成基本法」に反対する立場を表明し、討論を終わります。

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