放送倫理・番組向上機構への申し立て

 常に「情報公開が大切」と考えてきた私だが、この度のテレビ朝日の取材姿勢について疑問が多く、議員有志で、次のような申し立てを行った。
申  立  書
 放送倫理・番組向上機構  竹 田   稔 理事長 様
 放送倫理検証委員会    川 端 和 治 委員長 様
 放送倫理・番組向上機構、放送倫理検証委員会の皆様におかれましては、日夜、正確な報道と放送倫理の高揚のため、検証活動を行われていることに心より敬意を表します。
さて、去る3月24日、テレビ朝日の「スーパーJチャンネル」において、荒川区の議会費予算をめぐる報道が行われました。この報道は、人間ドックを含む議員健康診断と、老朽化した議長室備品買い換えの予算について、「お手盛り」「議員特権」と批判する内容構成となっています。
私たち荒川区議会の有志は、この番組が著作権侵害などの手段を選ばぬ取材方法をもって制作されていること、また事実と異なる主観的な報道によって公平・公正さを欠いたものとなっていることから、放送倫理上重大な問題があると考え、貴委員会に審議の申し立てを致します。
今日、テレビ放送の社会的影響力は大きく、私たち地方議員の地道な活動にもかかわらず、事実に反する印象を与える一番組によって区議会そのものの信用が損なわれ、地方政治に対する信頼が失われることは残念でなりません。
 以下に、経緯と事実関係を示して申し立てを致しますので、ぜひともご審議いただき、適切なご判断を下して頂きたいと存じます。どうぞ宜しくお願い申し上げます。
            荒川区議会議員  鳥 飼 秀 夫(自民党荒川区議団所属)
               同     茂 木  弘(    同     )
               同     瀬 野 喜 代(民主党・市民の会所属)
 同      斉 藤ゆうこ(あらかわ元気クラブ所属)



■取材方法、制作手法の問題について■
1.)荒川区が著作権を有する議会ホームページの音声を、区に無断で放送に使用した。
テレビ朝日は、平成21年3月24日の放送で、荒川区議会が情報公開の一環としてホームページ上で配信している音声(平成20年決算特別委員会における戸田光昭議員の質疑の一部)を許可なく使用しました。
ホームページで配信している音声は、個人が誰でも自由に聴取できるものですが、これを報道番組の素材として使用する場合には著作権法の規定により、著作権を有する荒川区の許諾を得なければなりません。テレビ朝日は3月6日付で荒川区に当該音声の使用を申請しましたが、区は許諾を行っておりません。従って、音声データの使用は明らかに著作権法に抵触する行為です。 【資料:1】
2.)2名の議員が許可無く撮影した議長室応接セットの写真を番組に使用したこと。
番組で使用された写真は、2月25日、浅川喜文、小坂英二両議員が議長の許可を得ず無断で議長室に立ち入り、気づいて部屋に戻った議長と事務局職員の制止を振り切って強引に撮影したものです。このような不穏当な事件は荒川区議会始まって以来の事であり、この経緯について若林清子議長は予算委員会の席上で抗議の発言をしています。
【資料:2】
2名の議員はこれ以前にテレビ朝日の取材を受けており、番組に写真を提供する意図で撮影を強行したものと推察されます。私たち4名はテレビ朝日に対し、このような手段で撮影した写真を番組で使用しないよう事前に文書で申し入れましたが、誠実な回答のないまま写真は使用されました。 【資料:3】
「欲しい絵」さえ入手できるのなら、それがどのような手段で撮影したものかを問わないという番組制作の姿勢は放送倫理にもとるのではないでしょうか。
3.)議会事務局が予算の見積りを依頼した什器メーカーに虚偽の取材要請をしたこと。
 大野公二ディレクターは、議会費で買い替えを予定していた応接セットを撮影するため、「荒川区の広報課から取材許可を得ている」と偽り、ショールームでの応接セット撮影を申請しました。しかし、荒川区広報課がそのような許可を出した事実はありません。不審に思ったメーカー担当者が区議会事務局にメールで問い合わせたため判明しましたが、事務局が問いただしても「メーカーの勘違いじゃないですか」などと非を認めようとしません。
   先の点と同様、映像を得るためには手段を選ばない行為は、番組制作上の倫理感が著しく欠如した結果と思われます。 【資料:4】
4.) 議長に対して強引な取材を行い、「取材拒否」の印象を与えようとしたこと。
   若林清子議長は大野ディレクターに対し、文書で回答を行う旨連絡し、3月13日に回答を行いました。しかし、大野ディレクターは3月14日朝、産業展開会式に出席する議長を予告なく自宅前で待ち構え、カメラを回しながら執拗にインタビューを試みました。
   式典終了後も、次の予定を控えた議長をカメラとマイクで追いかけ、階段を降りる姿を撮影し続けています。議長は「身の危険を感じた」「これでは公務に支障をきたす」と周囲に助けを求めました。 【資料:5】
   「逃げ回る議長」を映像によって印象づける意図で、故意に予告なくインタビューを行ったと推察されます。この映像については、放送を見た区民からは「インタビューの仕方に不快感を持った」「ストーカーのようだった」との声が聞かれました。
私たち議員は公人であるとは言え、ひとりの市民です。このような取材方法が知る権利や報道の自由の名の下にまかり通るのであれば、メディアは傲慢のそしりをまぬがれないと思います。
5.)私たちの申し入れに対するテレビ朝日の組織としての不誠実な対応について
   2月議会開会直後から始まったテレビ朝日の取材姿勢に危惧を抱いた私たち4名は、3月15日、テレビ朝日広報部あてに取材の正常化と話し合いを求める申し入れ文書をファックスで送りました。翌16日、報道局報道企画部長・小野瀬雅久氏より、ファックスを受け取った旨の電話があり、同時に大野ディレクターより私たちに対して、それぞれインタビュー取材をしたい旨の電話が入りました。
   広報部あてに文書を送ったにもかかわらず、なぜ「問題がある」と指摘した当の報道局が窓口となったのか、疑問を持った私たちは、翌17日、テレビ朝日に電話で問い合わせました。しかし、受付は「広報部にはお繋ぎできない。この件は報道局に繋ぐよう指示されている」の一点張りであったため、仕方なく、指定された小野瀬氏を窓口として「まず当方の文書に対する回答をもらいたい。取材はその後の話である」との返事をしました。
   18日に小野瀬氏よりファックスで第1回目の回答が送られ、19日に電話で小野瀬氏との話し合いを求めたところ「いま忙しいので、私がお会いする日時は連休明けの23日に決めさせていただきたい。大野から電話を入れるので、話し合いと取材の日時を直接決めてほしい」との事でした。この後、私たちは第2回目の質問を送付しました。
19日夜、大野氏から電話が入り、「23日6時に議長室で話し合い、その後取材を受ける」との約束をしました。この際、大野氏は「それではお伺いします。10年間で最も公平な番組に致します」と答えています。
   しかし、23日に現れたのは岩田ディレクターと撮影クルー2名で「インタビューを取りに来た。話し合いとは聞いていない。大野は(春闘の)ストライキ中で来られない」との事でした。私たちは「約束が違う」とお帰りいただきました。この後に大野氏から電話があり、驚くことに「自分は最初から行くつもりはなかった」と述べました。小野瀬氏に事情説明をお願いする旨連絡しましたが、不在でその後も応答はありませんでした。
   翌24日11時過ぎに小野瀬氏から「第2回目の回答を送った。昨日の件は関知していない。すでに番組は編集を終えているので、いつでも放送できる」との電話が入り、その後、大野氏より荒川区広報課に、夕刻の番組で放送を行う旨の連絡がありました。
また、18日に自民党区議団が広報部あてに別の文書申し入れを行いましたが、こちらについては「受け取っていない」と主張したため、24日に再度ファックスを送信したところ、形ばかりの回答が送られてきました。私たちの抗議にもかかわらず、小野瀬氏は「放送を見てご判断いただきたい」と主張し、放送は強行されました。
   私たちはこのような経過を振り返り、言を左右して話し合いを行わず、指摘した事実関係を調査・検証することなく放映のみを優先した、極めて不誠実な対応が組織ぐるみで行われたと感じています。大野ディレクターは区議会事務局に対し、「政治的圧力がかかった」と発言し、自らを被害者、我々を加害者であるかのように振る舞いました。他者の批判をこのように決めつけ、社会の常識とかけ離れた対応を行うテレビ局の倫理感の無さには強い驚きと怒りを感じています。 【資料:6】
■公平性・公正性を欠き、事実と異なる印象を強く与えた番組の構成について■
1.)人間ドックを含む議員健康診断に関する報道 
   議長、事務局長が「実施にあたっては自己負担が検討課題である」と回答したにも関わらず、番組においてこのコメントはわずか1回しか紹介されていません。他方、「全額税金負担」との文言は繰り返しコメントされており、「全額公費負担がすでに決定している」という事実に反する印象を視聴者に与える構成となっています。
この結果、「荒川区議会はすでに人間ドックを実施しており、議員全員が公費で受けている」という誤った認識を持つ視聴者が多数見受けられ、誤解に基づく抗議が区議会事務局に寄せられました。
さらに、戸田議員の写真映像にホームページから無断で取得した「少なくとも議員の健診を人間ドックレベルまで上げるべき」という部分の音声を被せて放送したことにより、あたかも戸田議員が「全額公費で人間ドックを実施するよう主張した」かのような誤解を視聴者に与えました。委員会会議録を見れば、戸田議員がこうした主張をしていないことは明白です。しかし、この放送によって、戸田議員は「お手盛り」「議員特権」を主張した議員、という不名誉な批判を浴びることになり、長年培った議員としての信用を著しく損ないました。
このように、取得した映像・音声の一部分のみを前後の脈絡なく使用するなどの方法でテレビ局が恣意的に編集権を行使すれば、事実と異なる印象を視聴者に与えることは容易です。私たちは、今回の報道が議会における議員の自由闊達な質疑や政策論議を妨げることにつながる問題であると捉えています。
2.)議長室の応接セットについて 
番組の中で大野ディレクターは「現在の応接セットはまだ使えます」「購入予定品は豪華です」と述べていますが、それはあくまでも番組制作者側の主観に過ぎません。
耐用年数の8年をはるかに超過した26年の使用期間が長いか短いか、想定品が他議会や2千人程度の従業員を擁する民間企業の応接セットと比較して豪華か否か、また、地域経済が悪化する中で区役所が「買い控え」をすることの是非、区内企業から調達・購入することの効果など、多面的な角度から取り上げて総合的に評価・報道するのが、公平で公正な報道であると考えます。
今回の報道は「無駄遣い」「議員特権」とのステレオタイプで主観的な結論が先にある独断的な構成であると言わざるをえません。客観性を欠き、公平・公正な観点を欠く報道によって、区民の議会不信や敵視を煽る結果となったことは誠に遺憾です。
以 上
最後になりますが、私たちは取材に区議会を来訪した担当ディレクターがインタビューにあたって「自・公の数による横暴ですね」と発言するのを耳にしました。時節柄、政治的意図をもって番組を制作したと受け取られても致し方ない発言だと思います。
また、特定の議員のブログを情報源とする丁寧な調査や裏付け取材のない報道、コンプライアンス重視に逆行する取材の手法、結論ありきで不都合な情報には耳を貸さないテレビ局の姿勢等に接して、議員・政治家に対する悪意も感じました。
そのような中で、この間の放送倫理・番組向上機構の皆様の活動や総務省の取り組みに
触れ、超党派で実情をお訴えしようと考えるに至りました。私たち4名は党派・会派も異なり、政治的立場や予算に対する賛否もそれぞれ異なりますが、今回の報道が荒川区議会の信用を傷つけ、今後の政治活動の自由を脅かしかねないとの共通の認識から、連名で貴委員会にご審議をお願いする次第です。
文面では伝わりにくいニュアンス等もあるため、機会が得られますならば、ぜひ参上して直接お話をさせて頂きたいと存じます。どうぞよろしくお取り計らい下さい。
平成21年4月6日

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