国民保護条例

 区議会最終日、有事関連法の一つ、国民保護法に基づく条例(協議会条例および対策本部条例)には反対の意見表明を行った。
 荒川区では可決されたが、高知県大月町では、反対7、賛成4で否決されたそうである。
討論原稿から


 私は議案第1号荒川区国民保護協議会条例の反対討論を行います。
    この条例は、戦争を想定した有事関連法のひとつである、武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律、いわゆる国民保護法に基づいたものであります。政府は戦争を想定した条例をつくることを地方自治体に押し付け、国民を不安に陥らせるのではなく、国民が平和に暮らせることを保障するため、何が何でも平和外交を貫くべきと考えますので、この条例には反対します。
    私達の命と生活を左右する、有事関連法とされる武力攻撃事態法、国民保護法案やジュネーブ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の追加議定書など10の法律と3つの条約については、国会での議論も少なく、あまりにも国民的議論が不足していると言わざるをえません。
地方自治体の「費用対効果」という視点からいうならば、起こる可能性の非常に低い、いや、あってはならない武力攻撃に備えるのならば、はるかに起こる可能性の高い震災対策を整備することが優先するのではないでしょうか。8年前に修正されたまま放置されている、荒川区地域防災計画を区はどのように位置づけているのでしょうか。この間の各地での地震経験をいかした地域防災計画の整備に着手すべきではないでしょうか。
しかし、今回、荒川区が、国の定めに従って、国民保護協議会をつくらざるを得ないというならば、平和な荒川区をつくるための様々な議論がおこなわれることを求めます。荒川区平和都市宣言を実体化させる努力をするべきです。協議会は「広く住民の意見を求めるために設置する」とうたわれているのですから、偏った人選ではなく幅広い層の委員を確保するべきです。
    協議会は、区長の諮問に応じて区域に係る国民の保護のための措置に関する重要事項を審議し、区長に意見を述べること、そして、区長は、国民の保護に関する計画の作成にあたって、あらかじめ、協議会に諮問しなければならない、とされています。
 協議会の中ではまず、武力攻撃事態に備えるとはどういう事態を想定しているのか明らかにするべきです。仮想敵国を想定しているのか、あるならば、有事を避けるためには何をすればいのか、明確にするべきです。現実に脅威にさらされているのかどうか、もし、あるとすればその脅威をどのように防ぐべきかを協議会で是非、協議し、政府に提言していただきたいと思います。テロの危険性をいうなら、従来親日感情の強いイラクに自衛隊を送り込み、テロの対象となっているアメリカと共同歩調をとり、イラク国民の反感を買う事こそ、テロの危険性を生み出すものです。
さて、「市町村国民保護モデル計画」として、国民保護法に基づき、消防庁国民保護室が示したモデルの8つの基本方針には、
(1)基本的人権の尊重   があげられています。「国民の自由と権利に制限が加えられるときであっても、その制限は必要最低限のものに限り、公正かつ適正な手続きの下に行う」とされていますが、この中身を議論するには、協議会の中に弁護士など人権問題の専門家の参加が必要です
(2)国民の権利利益の迅速な救済  という点でも、弁護士の参加は欠かせません。
(3)国民に対する情報提供   というなら、今回の国民保護協議会条例案を区議会で審議することをもっと区民に知らせるべきです。ほとんどの区民が知らない状況の中で、条例を可決し、協議会を開催することは避けていただきたい。協議会の公開、審議の内容の区民への周知も欠かせません。
(5)国民の協力   という中には「国民は自発的な意思により、必要な協力をするよう努めるものとする」とありますが、自発的な意思をどのように確保するか丁寧に議論するべきです。
(6)高齢者・障害者への配慮及び国際人道法の的確な実施   とあげられていますが、保護というなら何よりも、弱者への配慮が必要なのですから、当事者の参加が必要です。国際人道法や国際紛争に詳しい専門家の参加も必要です。有事関連で批准した、ジュネーブ緒条約の国際的な武力紛争の犠牲者の追加議定書における無防備都市宣言についても是非研究すべきです。
(7)地方公共機関の自主性の尊重   というなら、在日外国人が多い荒川区の特性を配慮した議論、排外主義にならないよう慎重な議論をすべきです。草の根外交を実践をめざす荒川区なのですから、在日外国人の代表を委員に採用すべきです。荒川区の自主性を尊重するというのですから、すべて国の示したままに実行する必要もありません。
 以上、国民保護協議会について留意すべき事の一部を述べてきました。平和を求める区民の願いを踏みにじることないよう慎重な議論がおこなわれるよう祈ります。以上をもって、私の反対討論といたします。                   

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