2005年の一般質問

1.環境指標を活用した緑化推進について
2・治水・利水・防災のための雨水利用について
3・絶対高さ制限を定めた都市計画について
4・市民活動支援基金の創設について


21世紀は環境の世紀、地球環境をこれ以上悪化させること無く、後世に伝えるにはどうすればいいか、真剣に考えるべき立場に、私達は立っていると考えます。もったいないが流行語になり、持続可能なという言葉が鍵を握っています。持続可能なエネルギー消費、持続可能な経済、持続可能な都市づくりが、課題なのです。その観点から、質問を行いたいと思います。
はじめに、環境指標を活用した緑化推進についてうかがいます。環境指標とは持続可能な社会づくりの進捗度合いを定量的に測る「ものさし」であり、指標で表すことによって持続可能な社会に近づいているかどうかを市民が容易に評価でき、また政策の優先順位を明確化することで行政の意思決定者の政策決定を支援することが可能になる手法として注目されています。
さて、荒川区は、ご存知のとおり、緑被率は23区最低であります。樹木や草で覆われているのは区の面積の7.3%、74.42ヘクタール。残念ながら、本当に緑の少ない街です。
地球環境の危機が叫ばれる昨今、緑をもっと増やすことが求められています。樹木は地球温暖化の原因物質といわれるCO2を吸収し、酸素を排出します。都会におけるヒートアイランド現象は、都心の夏の気温を亜熱帯のマニラと同じにしてしまいました。コンクリートに覆われた屋上の温度は60度近くにまで上がっています。 屋上緑化に取り組んだ屋上では30度前後。最上階での省エネ効果は大きいようです。荒川区としても、最重要課題に位置づけて、緑化推進に取り組むべきだと思います。
緑は、生活に、人の心にうるおいをもたらします。好ましい住宅地として、緑がある街が選ばれます。コンクリートに覆われた都会ではとりわけ夏になると、緑陰の涼しさと緑陰を渡る風の心地よさは、誰もが実感するところです。落ち葉掃除が大変だからと街路樹を嫌う区民の声も一部にあるようですが、地球環境の保護のため、荒川区の住環境向上のため、区民のうるおいのある生活のため、大切な緑陰なのだと説明して、樹木管理に努めていただきたいと思います。緑陰にあふれ、樹木管理がしっかりしている自治体は、街の品位を保ち、環境問題に取り組む行政の意欲を感じるものです。
昨年3月に策定された荒川区環境基本計画には「緑化を進める」とはありますが、具体的な指標があげられていません。ただお題目として「緑化推進」言うのではなく、具体的な数値を示すことで、区の努力が評価され、区民の協力も得やすいと考えます。
荒川区もどんどん街が変わっています。新しい道路が何メートル完成し街路樹が何本ふえたのか、将来緑陰が形成されるほどの樹木が育つのか。新しい家が何軒たち、生垣助成を活用して生垣が何メートル増えたのか、企業が区の勧めに応じて、トタンやブロックの塀を樹木に変えて、生垣が何メートル増えたのか。再開発で樹木が何本無くなり、新しく植えられるのは何本なのか。校庭の芝生やグリーンスポットや緑地が、あるいは屋上緑化や壁面緑化が何平米増えたのか。はっきりと数値を明らかにするべきではないでしょうか。
20%クラブは、数値目標を掲げて環境保全に取り組む地方自治体の国際的ネットワークで、会員自治体の環境保全に関するさまざまな情報・技術・経験の交流を通じて、地球的規模の視点を踏まえた地域環境改善を促進することをめざしています。地球温暖化、オゾン層の破壊、大気と海洋の汚染…。いま地球環境を取りまく問題の多くは、国境を超えて広い地域に影響を及ぼしています。
 その一方、改善に向けた重要な役割を担っているのは、地球にやさしいライフスタイルを足元から心がける市民であり、その最も身近な行政組織である地方自治体だといわれています。20%クラブは、各自治体が、環境にとって悪いものの20%削減、または、環境改善に資するものの20%増加など、概ね5年間で達成すべき数値目標を掲げて、環境改善に努めることを促進するためのもので、加入することは、その自治体が、持続可能な開発を実現するための強い意志を持っていることを表す。
 「持続可能な都市のための20%クラブ」(略称:20%クラブ)は、こうした認識に基づいて1995年11月に開催された「環境にやさしい”まち・くらし”世界会議」(主催:環境庁、神奈川県及び神奈川県内市町村)で、設立が提案されました。そのなかで、世田谷区が緑化推進の目標指標を掲げています。世田谷区では生垣緑化の総延長を、今後の5年間で80%増加させるとしているのです。
荒川区も具体的な数値をあげて緑化推進に取り組むべきです。そして、樹木のCO2吸収量をもとに、緑化指標として換算すれば、さらに、分かりやすく、緑が増えていることが実感できるのではないでしょうか。是非、環境指標を活用して、区民と共に緑化推進に積極的に取り組むべきと考えますが、区の見解をうかがいます。
次に、治水・利水・防災のための雨水利用についてうかがいます。
「21世紀末の地球は温暖化の影響で降水量が多くなり、豪雨に見舞われる機会も増える」と国立環境研究所が発表しました。大気循環の変化と海水の蒸発による水蒸気の増加が原因としています。たしかに、毎年、集中豪雨が増えてきたように思います。加えて、都市がコンクリート化し、荒川区では、地面をみることがめずらしいぐらいになってしまいました。今、改めて、長期的視野にたった、治水計画を検討すべきではないでしょうか。とりわけ、毎年のように道路がひざまで冠水している。荒川3丁目の下水道改善工事に、区は積極的に区民と話し合いを行うべきだと思います。反対があったといいますが、今から13年前のこと、状況も様々変わっているはずです。下水道は都の仕事だからと放置することは、区の怠慢ではないでしょうか。
もともと、雨水は、人類にとって「恵みの雨」といわれるようにかけがえのない資源です。地球環境を守ると考えた場合、どのように雨水利用に取り組んでいくか、大きな課題でもあります。
国連によって国際淡水年とされた2003年、この年の3月には日本で第3回世界水フォーラムが24000人の参加で盛大に開催され、21世紀が水の世紀であることを印象づけました。海外に食料や工業製品の多くを依存する我が国にとって、世界の水問題はけっして他人事ではないという認識も広まってきています。
とはいえ、水道が整備された日本では、「湯水のように」水が使われてきました。飲料水になるほどのきれいな水を惜しげもなく、トイレで流し、車を洗い、植木に水遣りをしてきました。誠にもったいないことです。しかし、環境問題への関心の高まりは、雨水利用への関心にも広がっています。また、集中豪雨による都市災害と環境問題としての山間部の脱ダム意識は、「都市において自前のダムを持つ」という発想に光をあてています。いまからでも遅くはない、荒川区における水循環を考えるべきであると思います。
雨が降るたびに下水道が逆流する、都市型洪水が頻繁に発生する問題を抱えていた墨田区では、20年前に両国国技館に雨水利用を導入。周辺地域の民間の建物にも雨水利用を導入。下水道工事とあいまって、洪水を解決してきました。区施設を始め、民間大型マンションにも続々と、地下貯水槽が設置されています。建設時に掘った地中梁の空間を利用することもできます。貯水槽の半分は、豪雨の時の貯留用に空けておき、半分は雨水をためて、日ごろは、散水やトイレに使い、一部は防災のために備蓄して置くのです。これは、異常気候による渇水と洪水対策が必要となった全国の公共および民間の建物で、雨水貯留浸透技術として導入されています。近年の都市の集中豪雨は、ほんの10分間のピーク時の雨をいっとき、貯留することができたら、被害を減らすことができるという事実に基づいています。この、雨水貯留浸透技術の導入が、もし、荒川区ですすんでいたら、少しは道路冠水の被害を減らすことができた可能性もあります。いずれにしろ、9月4日の杉並・中野を襲った豪雨は、環状七号線地下に洪水対策として建設されてきた調節池が新設分までふくめて、満杯になった上に浸水被害がでたといいますから、「都市において自前のダムを持つ」「雨水浸透力を保持する」ことが必要であることはまちがいありません。
「雨水浸透力を保持する」ためには、自分の敷地内に降った雨の排水計画を把握することが必要です。江東区でも、建設計画における敷地内の雨水排水計画の指導が行われています。コンクリートをすべて張り巡らせるのではなく、雨水の浸透をどう考えるのか、そして、防災のために、水の貯蔵をどうするのか、区民の啓発が必要ではないでしょうか。最近街で増えている、一時駐車場に対しても、雨水の浸透をどうするのか、緑化に協力できないか、区としての働きかけが必要でしょう。
環境問題として都市の水循環を捉え、長期的展望を持つ都市計画として、雨水貯留浸透すなわち、治水・利水・防災のための雨水利用を考えるべきだと思いますが、区の見解をうかがいます。
次に、絶対高さ制限を定めた都市計画についてうかがいます。都心回帰がいわれて数年を経ますが、その勢いは相変わらずの状況です。都心のマンション建設ラッシュの波は、この荒川区にも次々とマンションが建てられています。
都市計画においても、地球環境を守る観点からも、持続可能な都市づくりが課題となっています。日本では、超高層建築を促進する規制緩和が行われ、日照権や風害、景観をめぐって、住民との紛争があちこちで起こっています。荒川区でも、あの、明治通り沿いの31階建てマンションの反対運動から6年がたちました。今では、南千住の再開発地域をはじめ、放射11号線沿いの東日暮里にも28階・   階のマンションが建ち、駅前再開発により、日暮里駅前には40階・33階・25階の超高層ビルが立ち上がります。三河島駅前にも、40階ぐらいの超高層ビルができそうです。
一方、荒川区は、木造密集地でしめられています。どのような、木造密集地域の再開発をどのように行っていくのか、住民ともっと語り合っていくことが必要ではないでしょうか。
従来、土地の狭い日本、とりわけ都心では高密度に土地利用を行う必要があり、そのためには、超高層化が必要だとされてきました。しかし、世界規模で「持続可能な都市づくりが課題となった今、超高層ではなく、中低層で地域コミュニテイを大事にした再開発を行えば、それでも、超高層と同じ人口密度が確保できるという考え方が建築家の間で広まっています。超高層住宅に人気があるようですが、広いところに孤立して立っているからにすぎません。先日のアメリカ、ニューオリンズのハリケーン災害で報道されたように、街の中心の超高層マンション地区には、貧しい人たちが住み、豊かな人たちは郊外に住む、そんな都市を形成したアメリカでも、超高層を規制する各地の動きに転換しています。
東京でも、絶対高さ制限の都市計画はすでに7区で策定され、この夏には、新宿区でも20m、30m、40m、50m、60mの5段階の絶対高さ制限を組み合わせて、全部で12種類の高度地区を設け、新宿駅周辺を除く、全区の約8割に指定しました。
東京の下町荒川の、街の景観には超高層は似合いません。超高層マンションをすべて否定すべきとはいいませんが、下町の暮らしを破壊しない再開発を区としても掲げるべきだと思います。建築家の間では、高層化ではない、木造密集地の再生を可能にする試案が掲げられている。土地の所有と利用を分離し、中低層の立替促進を住民の手でおこなうものです。高層ビルの人口密度は、三階建ての低層集合住宅で置き換えられるともいいます。
絶対高さ制限を含む地区計画を住民参加で作っていくことが必要ではないでしょうか。荒川では、NPOまちづくりネットが活動を始めました。街づくりネットを活用して、区内随所にまちづくりのルールを決める地区計画をつくるよう、区も支援するべきと思いますが、いかがでしょうか。
最後に、市民活動支援基金の創設についてうかがいます
区民が互いに支え合い、心のふれあう、やさしさに満ちたまちづくりを進めるためには、今後はNPOやボランテイア団体による市民活動がますます需要になってきます。区民自らが、地域に必要な事業を主体的に発案し、工夫を重ねて非営利で、多様性のある活動を展開する市民活動を行政が支援することが必要です。区内で展開されている様々な市民活動を励まし、さらに、新しい市民活動を誘導するために、市民活動支援基金を提案したいと思います。
市民活動に不足しているのは、活動資金です。いくらボランテイアで活動を始めようにも、動き出せば、何かとお金がかかるのは、福祉・環境・青少年育成・国際交流・街づくりなど、どの団体にも言えることです。活動の趣旨を理解してもらい、会費や寄付集めに奔走する毎日だと思います。
私自身、企業に寄付のお願いに言ったところ、まず、言われたのは、「趣旨は結構ですが、税金は免除扱いになるのですか」ということでした。社会貢献と言っても、税法上の利点も無いのでは二の足をふむ企業があるのが現実です。      そこで、自治体に寄付すれば所得控除を受けられる制度を活用し、区民や法人等からの寄付を区が受け皿となって、市民団体に提供する、市民活動支援基金を荒川区として創設したらいかがでしょうか。自分では活動できないけれど、地域を良くするため頑張っている団体に寄付したい区民や法人は、多いはずです。区が、市民活動支援基金を創設するということは、何よりも、区をあげて、市民活動を育成・支援しようとしているという区の姿勢の表明でもあります。また、市民活動に身近に接する事ができない人への啓発にもなります。
この、市民活動支援基金については、寄付者があらかじめ、団体を指定するあて先指定方式と、寄付を希望する市民団体を登録し、公開プレゼンテーションを行い、学識経験者や区民による審査で、配分を決めるコンクール方式が考えられます。
個人や法人からの寄付の同額を、自治体が上乗せしするマッチングギフトを導入し、市民活動の活性化にてこ入れしている自治体もあります。市民団体は様々な工夫で、いかに低廉な活動費で、最大の効果をあげるかを、日夜考えているわけですから、非常に効果の上がる、税金の使い道といえます。さらに、コンクール方式で、ひろく、NPOやボランテイア団体を募集するわけですから、行政では真似できない、地域のニーズにあった提案がされるのではないでしょうか。市民団体としても、プレゼンテーション技術を培い、ネットワークを構築するまたとない機会だと思います。様々な活動に触れ、お互いに知恵を出し合い、協力体制を構築するきっかけとなる、このような場があってこそ、市民活動は成長し、地域に、より大きな貢献をしてくれることでしょう。
荒川区の財政力指数は23区で最低であります。だからこそ、よけい、区民自らが、地域をよくする市民活動を大きく広げなければならないのです。
団塊の世代の定年を迎え、元気な60歳前後の人々が、地域で活動をはじめる、2007年はもうまじかです。いまこそ、区が、市民活動を応援する姿勢をはっきりと打ち出すべきです。この、市民活動支援基金は、第一に歓迎される取り組みであります。区は、市民活動の創出・支援に一歩踏み出すときだと思いますが、見解をうかがいます。
   

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