一般質問2008

1、特別支援教育のありかたと幼児期からの療育・教育支援について
2、ごみ減量のための消費者・事業者啓発とバイオマス再利用について  
3、改正DV法に基づく基本計画について
4、電磁波問題について 
5、尾久初空襲にちなむ平和事業について
以上の項目に就いて質問した。西川区長が、電磁波問題での職員対応に「区には窓口はありませんが、何かお手伝いできることはあるでしょうか」(というような感じで)対応するべきだと回答されたのは、さすがである。DVについても、具体的に説明したので、(自民党区議はかなり空席だったけど)「そういうこともDVなのかと認識を新たにした」と発言があった。DVについて理解してもらうのが目的だったので、よかった。ごみ減量に就いても「指摘のあった荒川区民の2分の一のごみ量だという町田市を研究したい」と理解していただけたので、私としては、成果ありの一般質問だった。
以下、一般質問の内容


 民主党・市民の会の瀬野喜代です。西川区長が、荒川区基本構想に荒川区の未来像として「幸福実感都市あらかわ」の実現を掲げ、「グロス・アラカワ・ハッピネス」を提示されたことに共感しております。区長選挙に出馬されるとのことですので、再選された折には、区と区民が協働で、幸福実感都市の実現を目指す区政運営を願っております。GAHの元である、国民総幸福量世界一のブータンは、文化遺産を積極的に保護、環境のためプラスチックは使用禁止、教育費や医療費は無料。貧しくても、物質的に豊かでなくても、家族や地域が仲良く暮らしていることが「幸福感」につながるといいます。区長の今年度施政方針演説「温かい人と人との結びつきを大切にする社会をめざす」に共通するところです。区長は東大名誉教授月尾よしおさんの言葉を引いて「不幸だと思う人を減らすことだ」と語っておられました。私も同感です。
 私に寄せられた苦情から、区政の不十分な点を指摘し、参考にしていただいて、区民満足度の高い区政をめざしてほしいと思い、質問いたします。
 まずは、特別支援教育のありかたに就いてです。普通学級にはいった児童の保護者に対し、ある学校では、担任からは、「おたくのお子さんの教育が大変で、私はこんなにやせました」、補助員からは「養護学校へ行ったほうが、お子さんのためですよ」との発言がありました。こういわれた保護者の苦悩はいかがだったでしょうか。以前、保育士から、「あの子を引き受けてくれる普通の小学校なんてあるわけがない」とも言われたそうです。保護者は学校選択にあたり、児童精神科の医師からも、北区療育センターの担当員からも、「普通学級でやっていけるでしょう」といわれ、「荒川区でも補助員制度が始まった」と喜んで普通学級を選択しました。教育委員会は親の希望を受け入れましたが、教員・補助員がこのような発言をするまで追い込まれてしまったのは本当に残念です。現場の教職員に、統合教育・インクルージョン教育についての理解が不足し、実践のノウハウが少ないことが原因ではないでしょうか。
昨年度から、補助員が配置され、こどもたちのニーズに応じた教育がはじまりました。荒川区では、就学相談で心障学級や養護学校へと強い指導を行った時期がありましたが、現在は保護者の意向を否定しない学校選びに方針転換したことを歓迎しています。障がいの有無に関わらず地域で共に暮らす社会すなわちノーマライゼーション社会の実現には、「共に育ち共に学ぶ」地域での育ち合いが必要不可欠と社会的理解が進んできました。
大阪近辺の自治体では、統合教育を30年も前から実践しているようですが、東京では原則分離の教育を進めてきました。分離教育があたりまえだったため、教員も「障がい児は普通学級ではなく、特別なところで、特別な教育を受けたほうが幸せ」という固定観念があります。障がい児とともに学ぶクラス運営の知識も、実践も不足し、「こども同志の交流がこどもを育てる」統合教育が評価されていないのが現実です。「この子はここにいるべきではない」という大人の気持ちを子どもは敏感に感じ取ります。
 一昨年12月国連で障がい者権利条約が全会一致で採択され、日本も昨年9月に、署名しました。現在、批准に向けた国内法の整備の検討段階です。障害者権利条約では、ノーマライゼーション社会の実現のためには合理的配慮をしたうえでの統合教育:インクルージョン教育が必要とされ、世界の基準になっています。「共に育ち、共に学ぶ」理論と実践について、丁寧に、教員・補助員等に研修を行い、理解をすすめる必要があると思いますが、いかがでしょうか。
 区内には、統合教育を行っているアメリカの補助指導員向けの手引書を翻訳し「インクルージョン 普通学級の特別支援教育マニュアル」を発行した、荒川みんなネットという障がい児の保護者の会があります。実際の教室での事例集などを集めたものですが、新聞でも紹介され、全国から問い合わせが殺到しているようです。荒川みんなネットは補助員制度が始まるに当たり、人材確保や研修などにも協力したいという要望を出しましたが、その時の教育委員会は区民との協働について臆病で、実現には至りませんでした。もったいないことです。障がい児の保護者は、自分のこどもの教育について意欲的で、情報把握もされています。区の特別支援教育推進の良きパートナーとなる人たちなのです。
意識ある区民とともに、荒川区の特別支援教育をこどもと保護者によりそう心優しい日本一の特別支援教育にしていただきたいと思います。教育委員会の見解を求めます。
 次に、幼児期からの療育・教育支援についてうかがいます
ノーマライゼーションのまちづくりを市長が掲げた東松山市では小学校入学先を振り分けていた「就学指導委員会」を廃止しました。情報を提供する位置づけの「就学相談調整会議」の就学相談員は個別相談で保護者が就学先を決めるのを手伝い、その結果の報告を受け、必要に応じた補助員や設備改修が予算化されます。幼稚園や保育園を専門家が巡回して相談に応じ、希望の入学へとつなげていくきめ細かな支援体制をつくっています。
統合教育の長い歴史を持つ、豊中市教育センターは3歳半から中学生までの教育相談を一括して受け付けています。遊戯療法や箱庭療法のできる個室があり、子どもが治療受けている間に親に対してカウンセリングも行われます。発達のおくれから不登校までさまざまなこどもの問題の相談に応じています。
 先進地の事例に学び、障がい児の幼児期からの支援体制を学齢期へつなげ、さらには、学校を卒業し、地域で生活するための支援へとつなぐ、総合的な相談体制が構築できれば、障がい者やその家族、関係者の苦労が軽減すると考えます。
障がい児とその保護者の気持ちに寄り添う、生涯にわたる支援を荒川区で実現するために、まずは、たんぽぽセンターと教育センターの連携と一体化が必要ではないでしょうか。区の見解をうかがいます。
 次に、ごみ減量のための消費者・事業者への啓発とバイオマス再利用についてうかがいます。
廃プラスチックの焼却が始まりました。環境問題に熱心な方から、なぜ、他の区が取り組んでいるリサイクルを荒川区が取り組まないのか、分ければ資源という標語はウソだったのかと、苦情がだされています。区も、現状でいいとは思っていない、リサイクルを拡大するよう検討すると答えるものの、具体策の提示がありません。中間処理施設を含むリサイクルセンターの場所も中に浮いたままです。一刻も早く、次の一歩を提案して欲しいと思います。同時に、あらためて、ごみ減量の区民運動を巻き起こす覚悟が必要です。
昨年度の荒川区民一人1日あたりのごみ量は850グラム、町田市は479グラム。荒川区民は町田市民の1.8倍のごみを出しています。町田市長は「ごみになるものは作らない・燃やさない・埋めない」と基本方針を打ち出し、134名の市民委員が1年で280回の会合を重ね、生ごみの堆肥化やプラスチックごみの減量・資源化、ごみゼロ市役所などを提言した「ごみゼロ市民会議報告書」を完成させました。荒川区も環境先進都市を目指すと掲げるなら、ぜひ、町田に学び、区民運動としてごみ減量に取り組むべきと思います。まず、「ごみを作らない」ためには、「ごみが出ない」という基準での買い物が必要です。事業者にも、必要のないトレイ等容器を使わず、包装を簡略化するよう要請したらいかがでしょうか。区民・事業者・商店街等によびかけ、ごみ減量区民会議を開催し、具体策を協議するなども考えられます。区は、ごみ減量にむけた消費活動の啓発を大々的に行うべきと考えますが、見解をうかがいます。
 次に、バイオマス再利用についてうかがいます。バイオマスとは生物由来の有機物で、荒川区では建築廃材・樹木の剪定枝や落ち葉や雑草・生ごみや廃食油など食品廃棄物が考えられます。廃食油のディーゼルエンジンへの再利用が話題ですが、荒川区では給食の廃食油をインクに再利用していると聞きました。もっと拡大できないでしょうか。まずはバイオマスそれぞれが、どのように処分されているか、明確にし、区民に公表すること、そして、再利用できるものはするべきです。まずは、調査と研究が必要ですから、ぜひ、区民とともに研究会をたちあげて欲しいと思います。いかがでしょうか。
 次に改正DV法に基づく基本計画の策定についてうかがいます。デートDVという、DV予防策が各地で取り組まれているけれど、荒川区ではまだなの?という区民のご意見を頂きました。市町村に求められている基本計画を区民参画で策定する中で、荒川区も取り組むべきと考え、質問します。
改正DV法は今年1月11日から施行されました。市区町村に基本計画の策定を奨励しています。なぜなら、配偶者の暴力から逃れた後、自立に向けた支援を担うのは、市区町村であるからです。
ドメスティック・バイオレンス、すなわち、配偶者からの暴力は、圧倒的多数は女性が被害者です。配偶者からの暴力には、身体的な暴力に限らず、精神的、性的、経済的など様々な形の暴力があります。
身体的暴力として、殴る、蹴る、物を投げつける、はわかりやすいですが、精神的暴力として、怒鳴る、無視する、人前で侮辱するのも、DVです。
性暴力として、性行為を強要する、避妊に協力しない、中絶を強要する、ポルノビデオを見ることを強要する
また、経済的暴力として、生活費を渡さない、働きたいのに働かせないなどもDVです。
子どもに暴力を見せる、母親を非難中傷させる、子どもに暴力を振るうといって妻を従わせるなど、子どもを巻き込むことも多く、暴力は親から子へ連鎖するといわれます。
世界のDV被害者支援の動きを知った女性たちが理論と実践を学び、日本版の支援マニュアルを創り上げてきました。荒川区内を拠点に全国で活動している女性ネットさやさやは先駆者として有名です。
日本では、昔から「夫婦喧嘩は犬も食わない」といわれ、当事者しかわからない密室である家庭の中での出来事はなかなか表面化しませんでした。しかし、内閣府のアンケート調査では、3割の女性が、配偶者からの暴力を受けたと答えています。
今年の法改正により、被害者の安全を守るための保護命令制度が充実しました。加害者に対し同居していた住居からの退去命令や、被害者や子ども、あるいは親族などに付きまとうことを禁止する接見禁止命令、面会の要求や行動監視、電話やメール等禁止命令を裁判所が出せるようになりました。とりあえずの避難場所として各都道府県でシェルターが準備されています。
しかし、DV被害者がいったん暴力から逃れても、その後の生活をどうするかの支援は、市区町村に任されています。経済的自立も必要ですし、暴力のトラウマから精神的にも立ち直り、安定した生活を取り戻すには長い時間が必要です。DV被害者を支援する民間団体は、自ら資金を集め、ステップハウスとしてアパートなどを運営し、経済的自立にむけた訓練や、精神的安定のための日常的な見守りを行っています。行政として、民間団体を支援することも必要です。
また、市区町村の役割として重要なのは、DV防止に向けた啓発事業です。身体的暴力だけでなく、精神的、性的、経済的暴力もDVであることを、地域社会に徹底させる必要があります。DV被害者に対して、警察官や区職員、あるいは地域の人たちから、心無い言葉が発せられ、被害者が二次被害を受けることも防止しなければなりません。青少年向けに、デートDVについての認識を広める取り組みも必要です。全国的に有名な民間支援団体とともに、荒川区独自の、全国トップレベルの基本計画を区民参画で創り上げて欲しいと思いますが、いかがでしょうか。
 次に電磁波問題についてうかがいます
先日、携帯電話基地局のアンテナを、マンションのベランダのガラス越しすぐ見えるところに設置され驚いたという方からお話をうかがいました。ある日突然、アンテナのようなものが立てられた。聞いてみたら携帯電話基地局だという。何の説明もなかったことに憤慨して、区役所に行ったところ、職員に「区には窓口はありません、隣のビルのオーナーは、携帯基地局の設置で収入を得ているはずだから、反対すると損害賠償を求められますよ」と言われたそうです。
 幸福実感都市をめざす荒川区職員としては、なんとも情けない対応ではありませんか。
 送電線や家電製品などから発生する超低周波電磁波や携帯電話からの高周波電磁波などに長時間さらされ続けることで、がんの発生リスクが高まるなどという研究報告がインターネットのサイトには、いろいろ紹介されています。不安を感じる人も多いのではないでしょうか。
携帯電話からの高周波電磁波については、歴史が浅く、疫学調査も不足しており、安全とも危険とも、結論を出せる状態ではないようです。
しかし、こどもへの影響は否定できないとする研究報告を受けて、イギリス政府は、神経組織が未完成であり、頭蓋骨が薄く、長時間携帯電話を使用する傾向があるからと、16歳以下のこどもは使わないよう指導する通達を2000年に出しています。また、ザルツブルグの規制値は日本の規制値の100分の一です。
このような情報が、簡単に手に入る時代です。日本の規制はクリアしているからといって、住民が安心するとは思えません。ガラス越しにアンテナが目の前に見える部屋で、もし、妊婦が、あるいは乳幼児が24時間電磁波を浴び続けるとしたら、何十年後かに何か影響が出ないだろうかという不安を否定することはできないでしょう。携帯電話基地局の電磁波は上下よりも、真横に強く発生するそうです。そういう意味では、ビルの屋上に設置されたアンテナの同じ高さのマンションの住民のリスクが一番高いことになります。荒川区が気に入って、マンションを購入した後で、ベランダのガラス越しに携帯電話基地局アンテナを毎日眺めなければならなくなったのです。会社側も設置場所に配慮して欲しいという住民の願いは、当然ではないでしょうか。
国も強く、事前住民説明を携帯事業者に指導していますが、義務ではないため、今回のような、苦情や住民紛争が全国各地で発生しています。
いわき市は、『携帯電話等基地局の建設に係る紛争防止に関する指導要綱』を制定し昨年年6月から施行しました。事業者による情報開示、住民への計画の事前説明、周辺住民の同意などの手続きを明確にした内容です。
荒川区としても、紛争防止の観点から、いわき市のような指導要綱を制定するのもよし、携帯電話事業者に住民への事前説明を要請するとともに、国に、事前説明・情報開示の義務の法制化を求めること、住民不安をとりはらうために、疫学調査の開始を要請するなどが考えられます。
幸福実感都市をめざす荒川区としてはどのような対策をお考えでしょうか。
 
最後に、尾久初空襲にちなむ平和事業についてうかがいます
尾久橋のたもと近辺は、真珠湾攻撃から4ヵ月後の1942年4月18日土曜日正午過ぎ、日本で初めて、米軍中型爆撃機B25の攻撃を受けた場所です。あの、吉村昭さんの著書「背中の勲章」にも日暮里で米軍機を見た当時の思い出が生々しく書かれています。
13機の米軍機が飛来し、尾久では死者10名・負傷者48名といわれ、大本営は、米軍機9機を撃ち落としたと新聞発表しましたが、これは真っ赤なウソでした。空爆後、中国大陸の日本の占領地に不時着したアメリカ兵は殺され、捜索のために、多くの中国人が殺されたそうです。
戦争の縮図を見るような歴史的事実ですが、意外と荒川区民にはしられていません。戦争体験者が少なくなっている今、平和事業の重要度はますます増しています。郷土の歴史として尾久初空襲を広く周知し、戦争の悲惨さと平和の大切さを後世につたえていくことは意義深いことと考えます。
尾久橋たもとでは、毎年、4月18日を記念して、慰霊と平和祈念の集いが行われています。地元町会も参加しておられますが、尾久初空襲の地であるという表示物も、モニュメントも碑も、ましてや記念公園もありません。
今年3月に日暮里舎人線が開通し、高架下の整備が始まっています。尾久橋たもとの空間は、都有地で、野宿者のテントがあった時期があり、金網で封鎖されています。尾久橋町会ではお祭りのお神酒所や防災訓練や子供会で都からかりうけ、使っています。
橋下の空間を、金網をはったまま放置するのではなく、花壇や植え込みで整備し、地元住民が自由に利用できる広場にし、記念公園として、尾久初空襲のモニュメントなどを設置し、区として、日本で初めてわが町に空襲を受けた4月18日に平和事業を開催したらいかがでしょうか。区の見解を求めます。

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