一般質問2011

1、 防災計画の見直しについて
① 立案の場に女性の参画を増やし、災害弱者(高齢者・障がい者・アレルギーっ子等)当事者・関係者の参画を保障、健康・福祉の専門家や災害学の研究者、ボランティアの参画を求めること
② 区民から3・11に関連する経験談や防災に関する提案を募集すること
③ 荒川区の地理・歴史をふまえての水害・地震・液状化対策について
④ 区民向け防災講座の実施
2、 アレルギーについて
① 区民への啓発
② 当事者サークルへの支援
3、 若者の就労・自立支援について
① 若者の就労支援の必要性についての見解を問う
② 高校中退の実態把握と学習支援・居場所づくり
③ 「学び合いの授業」について
4、ユニバーサルデザインのまちづくりについて


民主党・市民の会の瀬野喜代です。
 まずはじめに3月11日の東日本大震災でお亡くなりになった方々のご冥福をお祈りし、いまだ過酷な状況に置かれている方々をお見舞い致します。この、荒川の地から、被災地に心を寄せ、今こそ、いままでの日本の国の有り様、経済、エネルギー問題を大きく転換し、持続可能で、心豊かに暮らしていける日本をつくっていきたいと思います。何よりも区と区民の協働を進めていく立場から質問します
 最初に、防災計画の見直しについて質問します。
 この度の甚大な被害を様々な角度から検証しようという試みが始まっています。荒川区においては、さっそく4月から防災課に防災計画担当課長を配置し、防災見直しに着手する姿勢を明らかにしたことを、まず、評価したいと思います。
 私も、いくつかの、人権擁護の立場から、あるいは、男女平等の立場からの避難所についての報告会に参加してまいりました。被災地の方々の想像を絶する頑張りに接して、若い弁護士や研究者も、熱心に災害弱者の人権問題に取り組んでいます。
 まず、語られたことは、避難所によって、人権に配慮されていたところとそうではないところの格差です。体育館などでのプライバシーを確保する間仕切り等の準備があったかどうかもありますが、リーダーたちが、女性や子ども、高齢者や障がい者の人権に配慮した運営に熱心であったか、育児や介護の主要な担い手である女性の意見をいかに反映したかの側面が大きいとのことでした。避難所によっては、1か月2か月たっても女性の更衣室もなく、女性が男性の目にさらされ、からかわれたり、性暴力被害もおこってしまった残念な状況が報告されました。高齢者・障がい者の避難所での困難な状況は、様々に語られています。とりわけ、一見しては分かりにくい、認知症高齢者やアレルギーを持つ子どもたちや発達障がいの子ども達が苦労しています。また、多くのボランティアが直後から被災地に駆け付け、物資を運び、片づけや炊き出し等に活躍しましたが、行政との橋渡しの難しさも指摘されています。
 そこで、今回の荒川区の防災の見直しに当たっては、立案の場に女性の参画を増やし、災害弱者(高齢者・障がい者・アレルギーっ子等)当事者・関係者の参画を保障していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。また、専門的な立場から災害の検証を行っている災害学の研究者や健康・福祉の専門家やボランティアの参画を求めることが必要ではないでしょうか。区の見解をうかがいます。
 また、区と区民が協働で防災を見直すという観点から、区民からの体験談や防災に関する提案を募集することを提案します。今回、帰宅困難者対策の必要性が明らかになりました。区も、2000人を超える帰宅困難者の受け入れを行い、さぞ、ご苦労されたと思います。会社の他、学校や保育園や高齢者・障がい者施設の対応の検証も必要です。停電になった街を歩いた区民や帰宅困難者を温かくもてなした区民、また、被災地にボランテイアに駆け付けた区民等など、さまざまな経験が蓄積されています。防災計画の見直しの最初の段階で、区民の関心を高める意味でも、区民から体験談や防災に関する提案を募集するのはいかがでしょうか。お答えください。
次に、荒川区の地理・歴史をふまえての水害・地震・液状化対策について伺います。この度の被害を検証すると、事前の住民の津波についての歴史的地理的知識や関心の高さ、訓練の適切さが被害を小さくしたことも言われています。この度の震災が起こったあとで、多くの国民は、869年の貞観地震について、そして、貞観地震の内陸3キロにも及ぶ被害の痕跡が1990年に発見されていたこと、今年1月に、30年以内に宮城県沖地震99%と発表されていたことを知らされました。災害史や地理的条件の無知は、被害を拡大します。災害学の新しい知見を活用すべきとも考えます。先の予算委員会で私が指摘した、隅田川堤防の決壊の可能性、あるいは、今まで、荒川区ではほとんど語られてこなかった液状化についても区民に情報を提供してほしいのです。この際、荒川区の地理・歴史をふまえての水害・地震・液状化対策を行う必要性があると思いますが、区の見解を伺います。
さらに、区民向け防災講座を実施することを提案します。災害史や地理的条件について、あるいは、過去の災害の教訓、先進的に防災に取り組んでいる地域の報告など、テーマは様々に考えられます。いままでの防災訓練や避難所開設訓練に加え、区民向け講座を開催することは、区民の防災意識を高め、防災リーダーの掘り起こしにもつながると思います。いかがでしょうか。
 2番目にアレルギーをもつ方々への支援についてうかがいます。
この度の震災で、アレルギーを持つ子どもたちいわゆるアレルギーっ子達が避難所では暮らせなかった事例が報告されています。卵・小麦などの食品の他、ホコリや蚊取り線香の煙などアレルギーの原因物質にすこし触れただけでも症状が出たり、場合によっては命にかかわることすらあります。アレルギーっ子を育てる家庭は、本当に大変な苦労しながら子どもの命を守っています。重篤な化学物質過敏症の方もおられます。アレルギーへの無知無理解が、とりわけ災害時に、「わがままだ」という周囲の反応となりがちです。アレルギーを持つ方々を災害弱者として位置づけ、適切な支援を行うべきだと思います。区内でも、荒川区アレルギー親子サークルかめっこが活動しています。かめっこのお母さん達は、以前から区の防災課に要望書を出してきました。私も、予算委員会でお願いしたところですが、対応が遅い上に、「原則自助努力」といわれ、荒川区に住むことに絶望すら感じるとおっしゃっていました。区職員の皆さんには「区民の心に寄り添う」ことをたびたびお願いしている私は本当に悲しいです。「大変ですね。一緒に考えましょう」と意見交換を続けていたら、感想は違ったはずです。アレルギーでもたいていの子どもが食べられる白いご飯の備蓄を増やし、必ず届くようルートを確保し、アレルギー対応食品は医療品として位置づけるなどのお母さん達の要望を実現してほしいと思いますが、そのためには、防災関係者のなかにも、一般区民中にも、アレルギーの正しい理解の普及が不可欠です。区の見解を伺います。
また、当事者の助け合いこそ、普段からも、災害時も大きな安心につながります。広域に活動するアレルギーっ子支援のNPOとつながることもより期待できます。アレルギーを持ちながら、孤立して頑張っている家庭も多いことでしょう。ぜひ、区としても、アレルギーを持つ方々の
サークルへの支援をさらに強めてしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
次に、若者の就労・自立支援について質問します。
被災地の皆さんの、助け合いの心、互いを思いやる言葉が心を揺さぶります。震災前までの日本は、孤立や無縁社会がキーワードでしたから、少し希望がみえたような気がします。若者が自暴自棄になり、助けてとも言えず、世間を恨み、いくつかの事件を起こました。孤立する若者たちが社会問題となっています。
私は、一昨年、子どもの貧困について一般質問をし、私なりに、調査研究を続けてきました。
それで思うのですが、荒川区では、青少年・若者へ支援があまり考えられていないと思います。担当部署がはっきりしないので、現状を把握することができず、対策もたてられないのだと思わざるをえません。以前、指摘したとおり、荒川区自治総合研究所の中間報告でも、中高生への言及が不足しています。
日本の将来を担うはずの若者に、正規雇用が少なく、ニート・フリーター・派遣労働者が多く、そして、ひきこもりが多発しています。荒川区内のひきこもりは、2007年度都の推計値は15~34歳で300人、そして、2010年度内閣府の推計値15歳から39歳で1000人と推計されています。貧困が、とりわけ、若年層に広がることは、将来の日本を支える力が萎えることです。荒川区でも稼働可能世帯の生活保護が急増し、生活保護家庭で育つ子どもたちが増えている今、改めて、若者への就労・自立支援が必要だと思います。
しかし、荒川区では、若者向けの就労支援の影が薄いのが現状です。
足立区では、国の予算を使って若者正社員就職サポートプログラムを就労支援課が実施。人材派遣インテリジェンスに委託して、企業と若者をお見合いさせ、26人の受講者のうち22人の正規職員雇用を実現したそうです。
荒川区でも、このような取り組みができないのでしょうか。
また、荒川区の若者に、ハローワーク足立と共に、就職に困ったら、様々な相談や研修や就労訓練を行っているあだち若者サポートステーションの利用をすすめてほしいと思います。フリーターもニートもひきこもりも、様々な要因がからみあっていて、さまざまな支援を用意する各部署の連携が必要だと思います。いずれにしろ、若者たちが精神的にも経済的にも自立すること、きちんと就労することが目標です。本人や家族の悩みの相談を受けながら、将来的には就労しようと、方向性を示す支援が必要ではないでしょうか。区の見解を伺います。
次に、高校中退の実態把握と学習支援・居場所づくりについて伺いたかったのですが、今回は問題提起にとどめたいと思います。
子どもの貧困問題を語る時、真っ先にあがるのが、「高校中退」問題です。高校を出ていなければ、安定した職業を得ることはかなり難しくなります。ニート・フリーター・ひきこもりなど、若者たちの困難な状況の原因の一つでしょう。しかし、荒川区では、実態は分からないに終始しています。先日も、私の近所で中退した少年がふたり、「これからコンビニに面接に行く」と話してくれました。東京都の全日制高校の中退率は2,2%、定時制では12,6%。荒川区の区立中学生1学年がおよそ1000人ですから、1学年20人以上が中退している可能性があります。高校中退の実態把握をしなければ、問題は明らかになりません。
昨年10月の決算特別委員会の総括質疑で、この問題を取り上げ、板橋区のケースワーカーの報告にあった、「生活保護や低所得世帯で不登校が多く、全日制高校への進学率が低い。塾利用の割合が低い」と紹介しました。荒川区でも同じ状態ではないでしょうか。生活保護家庭に育ったこども達が、成長し、親と同じように生活保護を受けることが多いとも言われます。
このような状況にある子ども達を応援する体制、学習支援や居場所などをどうするか、高校中退しないですむように、あるいは中退しても、自立できるように支援するために、子育てや教育と福祉の連携が必要だと議論してきました。どちらが担当するかという入り口でいつも話が終わってしまいます。子どもの貧困に取り組むという観点から、まずは実態把握をし、必要な支援策は何かを考えるべきだと思います。
 さらに、教育委員会に伺います。孤立する若者たちは、「助けて」「教えて」と言えないのです。「自分さえよければ」と「自分はだめなんだ」とは表裏一帯です。3月予算委員会で紹介したように、高校の先生から「高校生にもなるとすでに自虐的になっている子どもの支援は非常に難しい。小学校のうちからなんとかしてほしい」といわれています。小中学校で「やればできる」経験を積み、先生や友達から認められる、ほめられる教育をと願います。こどもの貧困問題を語り、孤立社会からの脱却を語る時、教育の場では、競争よりも協同の学びの体験が必要とされているのではないでしょうか。いわゆるグループ学習を一歩深めて、わからないで困ったらわかる子に「教えて」と言う 隣の子がわからないで困っているなと気づいて教えてあげる そういう学び合い、助け合いを評価する「学び合いの授業」が提唱され、実践されています。
 荒川区内でも、様々に、思いやり、助け合いの心を育む教育が行われていると思いますが、この、日本の大転換期である今、あらためて、「学び合いの教育」を推進することが必要ではないでしょうか。これこそ「落ちこぼれ」なくす教育となると思います。見解を伺います。
 最後に、ユニバーサルデザインについてうかがいます。
万人向け設計と言い換えられる、ユニバーサルデザインは、すべての人(高齢者、障がい者、外国人、子ども等)の立場に立ってデザインする(構想する、企画する、つくる等々)ことです。
今回の質問のなかで例をあげると、避難所の運営が、すべての人の立場に立って、配慮されることです。女性が怖い思い、いやな思いをすることがないよう、発達障害の子どもに落ち着ける場所が確保されるよう、アレルギーっ子に、白いご飯が提供されるように、外国人にも分かるように絵文字で表示がされるように等々、日頃から、ユニバーサルデザイン的な思考をする訓練が必要です。
この、ユニバーサルデザインという言葉も多くの人にとってはまだ耳慣れない言葉でしょう。言い換え語は万人向け設計だそうです。最近は行政の報告書などでもカタカナ言葉が多く、私などには、意味不明な言葉があり、ついていけません。耳慣れないカタカナ言葉を使わない配慮も
必要です。
また、男性の20人に一人と言われる色弱者に配慮することも必要です。NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構が、色覚の個人差を問わずできるだけ多くの方に見やすいように配慮された製品や施設に対して認証を行っています。
区にとっても、施策展開の最初から配慮する必要があるでしょうし、道路や公共施設、案内や表示、印刷物、学校の授業や教材などなど、配慮すべきことは、多種多様です。
荒川区においては、バリアフリーのまちづくり構想の中で、掲げられているところですが、改めて、区政全般をユニバーサルデザインの観点から振り返り、誰もが幸せを感じられる、誰にとってもやさしい区政をめざしていくべきではないでしょうか。そのためには、推進本部、あるいは検討会議などで区政全般を検証し、区職員の研修、区民の啓発などを含め、着実に推進していくことが必要かと思います。見解を伺います。

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