おしどり文学館の提案

 昨年亡くなった日暮里生まれの作家吉村昭さんを偲ぶ瀬戸内寂聴さんの講演と、津村節子さん・大河内昭爾さん・瀬戸内さんの鼎談がサンパール荒川で開催された。1000人の会場に申し込みが3000通、抽選にあたった幸運な区民で大ホールは満席だった。
 いつもパワフルな寂聴さんの講演は、まず、荒川区が、吉村さんを偲ぶ文学館をつくるのなら、「おしどり文学館」として津村節子さんもあわせてつくったほうが話題性があるという提案から始まった。
 瀬戸内寂聴さんは津村さんとは55年、吉村さんとは50年のおつきあいとのことで、少女小説作家だった頃のことや、同人誌仲間だった頃のことが語られ、津村さんへの友情と思いやりに満ちたお話だった。鼎談も、仲の良いご夫婦の様子が語られ、文学仲間の友情に温かい気持ちになった。吉村氏の緻密な小説が、徹底的な取材によって裏付けられていることが津村さんのお話でもよくわかった。寂聴さんが魂の存在を話されたので、津村さんの周りに吉村さんの魂が漂っているようで、最愛の夫に先立たれた妻のとまどいと、夫の妻への想いにしみじみとした気持ちに浸った時間だった。ありがとうございました。
 さて、このようなすばらしい提案をいただいて、文学館をどうするか。吉村さんも生前にご心配されていた、財政面の負担を減らすために、どのような工夫が可能だろうか・・・・。

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